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キリスト教思想
M・L・キングと共働人格主義
アメリカの黒人バプテスト教会の牧師マーティン・ルーサー・キング・ジュニアは、1950年代後半から60年代にかけて、公民権運動の指導者の一人として歴史にその名を残したが、その運動は非暴力の精神に貫かれた直接大衆行動を特色とした。その背後には深く知性に裏打ちされたキリスト教信仰とそれに基づく人格主義の精神があり、その行動の中核には、キングが人格神として捉える神と人間との「共働」という本質的な生き方があった。キリスト教思想マーティン・ルーサー・キング・ジュニア:そのキリスト教と民主主義
本書は、キングの著書・演説・説教・書簡を緻密に読み込むことにより、キングの「夢」、その思想と運動が、「キリスト教の伝統」と「アメリカ独立宣言やアメリカ憲法に述べられている民主主義の伝統」に深く根差していることを浮かび上がらせている。 また、文学ではなく思想の面において、リリアン・E.スミスを考察の対象としたのは、本書が本邦初である。キングがスミスを高く評価していたことを明らかにしている。キリスト教思想神学と文学 : 言語を機軸にした相関性
本書はテレンス・R・ライト(Terence R. Wright)の主著『神学と文学』(Theology and Literature, 1988)の全訳である。人間の経験の中にある言語によって,人間の経験を超えた神を語りうるのか? この神学的アポリアに文学評論の立場から取り組む.物語の神学,隠喩的神学,劇の神学を俎上に載せ,聖書の言語がこれらの文学的表現を通して豊かに神を語りうることを明らかにする.キリスト教思想現代に生きる教会の使命
ヴォルフハルト・パネンベルクの倫理学と教会論からなる論文集Ethik und Ekklesiologie. Gesammelte Aufsätze, Göttingen 1977の後半Ⅱ.Beiträge zur Ekklesiologie の訳である。前半部は1992年、同じく聖学院大学出版会から刊行された『キリスト教社会倫理』である。パネンベルク神学の観点から「教会の意味」について、その「使徒性や普公性」、また今日緊急な問題になっている「聖餐の理解」について、教えるところが多い。本書はまたパネンベルクの「エキュメニズム」論を提示している点でも重大である。キリスト教思想「ヨハネの手紙一」の研究:聖書本文の帰納的研究
新約聖書「ヨハネの手紙一」は小さな書簡であるが,キリスト教信仰の根幹に関わる思想を表明しているものとして長く重要な文書とされてきた.著者はこの書簡が書かれた背景,表現の特徴などから,論敵の主張に対するヨハネの反論などを詳細に論じ,読者であるヨハネ共同体がその時代において重要な使信として受けとめたかを明らかにする.キリスト教思想ピューリタン:近代化の精神構造
著者は,近代の成立をルネッサンスと宗教改革に求め,非宗教化と捉える俗説を排し,近代の起源を,「教会と国家の分離」「人間の個人化」「契約社会への移行」という構造変化に見出す.その構造変化の担い手としてのピューリタンたちの運動の思想史を描く.名著『ピューリタン』の改訂新著.キリスト教思想歴史と神学 下巻
本書は,大木教授の影響の広がりとその影響の強さが物語られているだけでなく,ここには領域を越えた対話を生み出すひとつの思想空間が形成されていることが提示されている.内容は,第Ⅰ部 組織神学とその周辺,第Ⅱ部 聖書神学,第Ⅲ部 歴史と神学,第Ⅳ部 社会と思想,第Ⅴ部 文学と神学,の五部構成.執筆陣の専門分野は,神学にとどまらず,文学,政治学,法学,経済史,など多彩である.キリスト教思想歴史と神学 上巻
日本にとどまらず世界の神学,また社会倫理,教育の分野で大きな影響を与えてきている大木英夫教授の喜寿を祝う献呈論文集.大木教授の神学,思想は「正典としての聖書に基づきつつ,社会変動の歴史的動向を洞察しその上で人間と世界,また日本の現実の深層次元に肉薄する衝撃力に富んだ思想である.その内容はエネルギッシュな『政策力』となって展開されるところにその真骨頂がある」(献呈の辞).その影響を直接的に間接的に受けた内外の44 名による論文集である.キリスト教思想ニーバーとその時代 :ラインホールドニーバーの預言者的役割とその遺産
「預言者的現実主義者」として,アメリカの神学者だけでなく,政治学者また政治家たちに多大な影響を与えたラインホールド・ニーバーの伝記.数多くのニーバーの伝記の中でニーバーの思想の意味をニーバーの生きた時代・社会との関連を明らかにしながら解明する「バランスのとれた伝記」として高く評価されている.写真8頁.キリスト教思想公共神学と経済
宗教の機能を個人の敬虔の問題として矮小化する傾向と宗教をだれにも与えられている真理の問題として拡散させる方向に対して,著者は,キリスト教神学の伝統から,「スチュワードシップ」という概念を展開し,キリスト教信仰は,公的領域に関わり,現代の政治・経済の複雑な課題に対しても,「解釈的で規範的なガイドラインを提供する」ことを論じる.著者は,プリンストン神学大学院教授.キリスト教思想アメリカ史のアイロニー
アメリカは20 世紀の半ば,突如として,国民的経験も精神的準備もないままに世界史的勢力として台頭し,世界史の中に踊り出た.この「大国」アメリカはどこに向かうべきか.本書は,原書が1952 年に出版されているが,世界史的「大国」アメリカの問題を「権力の腐敗」の問題として鋭く抉り出し,アメリカを自己認識と責任意識へと導こうとする,現代の問題をも照射するアメリカ論の新訳である.付録として巻末にニーバーの「ユーモアと信仰」を所収.キリスト教思想近代人の宿命とキリスト教:世俗化の人間学的考察
本書は,近代社会における宗教の衰退,あるいは宗教の個人化という「世俗化」現象を分析し,解明してきた宗教社会学の成果を批判的に吟味し,また現代の諸科学における「世俗化」の理解をとりあげながら,人間学的な観点から「世俗化」現象を考察する.宗教社会学・諸科学では欠落させてしまう人間の霊性に考察の光をあて,現代において人間的精神を回復させる宗教の意味を論じる.投稿のページ送り